Courtesy accidental (親切な臨時記号)
「Courtesy accidental」ってご存じでしょうか? Googleに翻訳させると「偶然の礼儀」などとトンチンカンをかえしてきますが、accidentalは音楽用語では「臨時記号」であり、courtesyはここでは名詞ではなく形容詞で、「名目的な」とか「親切な」とかの意味でしょう。これを日本語で「親切な臨時記号」と呼ぶようになったのは、つい最近のことじゃないでしょうか。たぶん、ミュージックソフトが出てきて、日本語にローカライズするときに、名前を決めたのでしょう。
ところで2ヶ月ほど前、Mascagni(マスカーニ)の「ママも知るとおり」の移調ピースをお買い上げいただいた方から、この「Courtesy accidental」についてのご意見をいただきました。「(・・・)楽譜で少し疑問があったのは、23小節の調号のすぐ隣にある「シ」の音に♭がついていることです。原調ではナチュラルがついているので、そのまま移調されてこのようになっていると思われますが、なんか変な気がしました。原調の23小節についているナチュラルも、本来の記譜の決まりでは不要なもの。近頃出版される楽譜にはこういう『ご親切』が多くって・・・。」
今回は、e mollからd mollへの移調でした。
早速、楽譜を見直してみました。
左側の楽譜が原調のe moll、右側の楽譜がd mollです。
なるほど、原調の場合は調号が♯でCourtesy accidentalがナチュラルなので、さほど不思議に感じませんが、d mollに移調すると、調号とCourtesy accidentalが重なり、何故ここに臨時記号があるのか、気になってしまいますね。
いわゆる「Courtesy accidental(親切な臨時記号)」は、私の知る限りでは、最近の楽譜だけでなく昔の楽譜でも頻繁に利用されています。特にクラシックの楽譜では、「2小節前の打ち消し」はよく使われていたようです。この「ママも知るとおり」では、2小節前の臨時記号に呼応して、「親切な臨時記号」を付けていますが、最近新しく版を起こした楽譜では、「2小節前の打ち消し」ではなく「1小節前の打ち消し」が一般的になってきています。
本来、「臨時記号は1小節内にのみ有効」であるため、「親切な臨時記号」は必要がないものですね。「念のために」という意味で使用されている「親切な臨時記号」ですが 、今回の楽譜では、つけない方が良いと思いました。
ここには、Courtesy accidentalの詳しい説明が書かれてあります。(英語です)
Accidental (music)
楽譜について、いろいろな感想やご意見をいただくのは、とてもありがたいです。どうもありがとうございました。
これからも、よろしくお願いします。
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