記譜

2016年6月 1日 (水)

ちょっと変わった移調ピースのご注文

当社、福田楽譜ではみなさまに「移調ピース」をお買い上げいただいていますが、先日、私たちが想像していなかったご注文をいただきました。
「歌の部分をトランペット(Bb管)で吹けるように、移調をお願いします」とのこと。
なるほど、同じ「移調する」でも、一般にいう「移調」と移調楽器のための「移調」は違います。

トランペットやクラリネットなど、管楽器には移調楽器と言われる楽器があります。
(「移調楽器」について詳しくは、wikipediaをご参照ください)
たとえば、トランペットのBb管とA管では、それぞれの管用の楽譜に書かれている「ド」の音を吹いたときに実際に鳴る音が異なります。

Newtxt2Bbnewtxt2  Anewtxt2

今回は、Bb管のトランペットが楽譜通り弾けば、歌をうたったときと同じ音が出るように移調して欲しいとのご注文でした。
上に書いたように、Bb管のトランペットで楽譜の「ド」を吹くと、「♭シ」の音がでます。
 jpg(Bb管の音階)
ピアノで弾いた楽譜の「ド」と同じ音をBb管トランペットで鳴らすためには、楽譜では「レ」の音にしないといけません。つまり、長2度上に移調するということになりますね。
今回の移調では、「原調のまま」ということだったので、ピアノパートの移調は必要ありませんでした。 

こんな楽譜になりました。   

普通の楽譜
Lakmetop

  Bb管への移調譜
Lakmebbtop

 

管楽器演奏者のみなさまのご注文も、お待ちしています!

 

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2015年6月 2日 (火)

Courtesy accidental (親切な臨時記号)

「Courtesy accidental」ってご存じでしょうか? Googleに翻訳させると「偶然の礼儀」などとトンチンカンをかえしてきますが、accidentalは音楽用語では「臨時記号」であり、courtesyはここでは名詞ではなく形容詞で、「名目的な」とか「親切な」とかの意味でしょう。これを日本語で「親切な臨時記号」と呼ぶようになったのは、つい最近のことじゃないでしょうか。たぶん、ミュージックソフトが出てきて、日本語にローカライズするときに、名前を決めたのでしょう。

ところで2ヶ月ほど前、Mascagni(マスカーニ)の「ママも知るとおり」の移調ピースをお買い上げいただいた方から、この「Courtesy accidental」についてのご意見をいただきました。「(・・・)楽譜で少し疑問があったのは、23小節の調号のすぐ隣にある「シ」の音に♭がついていることです。原調ではナチュラルがついているので、そのまま移調されてこのようになっていると思われますが、なんか変な気がしました。原調の23小節についているナチュラルも、本来の記譜の決まりでは不要なもの。近頃出版される楽譜にはこういう『ご親切』が多くって・・・。」

今回は、e mollからd mollへの移調でした。
早速、楽譜を見直してみました。

Courtesyaccidental01    Courtesyaccidental02

左側の楽譜が原調のe moll、右側の楽譜がd mollです。
なるほど、原調の場合は調号が♯でCourtesy accidentalがナチュラルなので、さほど不思議に感じませんが、d mollに移調すると、調号とCourtesy accidentalが重なり、何故ここに臨時記号があるのか、気になってしまいますね。

いわゆる「Courtesy accidental(親切な臨時記号)」は、私の知る限りでは、最近の楽譜だけでなく昔の楽譜でも頻繁に利用されています。特にクラシックの楽譜では、「2小節前の打ち消し」はよく使われていたようです。この「ママも知るとおり」では、2小節前の臨時記号に呼応して、「親切な臨時記号」を付けていますが、最近新しく版を起こした楽譜では、「2小節前の打ち消し」ではなく「1小節前の打ち消し」が一般的になってきています。
本来、「臨時記号は1小節内にのみ有効」であるため、「親切な臨時記号」は必要がないものですね。「念のために」という意味で使用されている「親切な臨時記号」ですが 、今回の楽譜では、つけない方が良いと思いました。

ここには、Courtesy accidentalの詳しい説明が書かれてあります。(英語です)
Accidental (music)


楽譜について、いろいろな感想やご意見をいただくのは、とてもありがたいです。どうもありがとうございました。
これからも、よろしくお願いします。

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2015年2月 5日 (木)

楽譜を比べてみると

楽譜を作るとき、わたしはまず楽譜を全部読みとおします。それは、曲の雰囲気をとらえるためです。楽譜を読んでどんな曲なのかを知ることが、楽譜作成にはとても大切だと、わたしは考えています。

何故そんなことを考えるようになったのか、みなさんに知ってもらいたくて、楽譜を2種類作ってみました。

楽譜(A)                       楽譜(B)
A     B

どちらも正しい記譜で作っています。1段に入れる小節数とト音記号とヘ音記号の距離を違えただけの同じ楽譜ですが、みなさんはどんなふうに感じますか?

たとえば、Aの楽譜とBの楽譜では、曲の速さが違うように、わたしは感じます。
そのほかにも、Aはどっしりした感じ、Bはもう少し軽く元気な感じが読み取れるような気がします。
1段に何小節を入れるかを変えただけで、曲のイメージが違ってくるように思うんです。

せっかく楽譜を作るなら、一目見ただけでその曲がどんな雰囲気か、簡単に読み取ることができる楽譜の方が、ずっと良いですよね。
まだまだ実力足りずで、なかなかそんな風にはできないのですが...。以前作った楽譜を見ては、「ああ、ここはこうしたほうが良かったなあ」と反省したりすることもよくあります。

まだまだいろいろ学ぶことがあるなあと思っています・・・。

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2014年10月31日 (金)

タイとスラーの組み合わせ

同じフレーズの中にタイとスラーがあったとき、どのようにつなぐのが正しいのでしょうか。

まず、前にタイがある場合。
Photo

この場合は、ほとんど誰もがタイの前側の音からつなぎますよね。
では、タイが後側にある場合はどうでしょう。
たとえば、こんな場合。
Photo_2

タイの前側の音につないだ楽譜もありますが、記譜として正しいのは、タイの後側の音につないだもののようです。

Music Notation (by Gardner Read)には、こう書かれていました。
「タイで結んだ音符で終わる楽句(passage)にスラーをかけるときには、スラー記号は、タイで結んだ前側の音符までで終わるのではなく、後側の音符まで伸ばさなければならない。 この規則を支配する原則は明瞭である。すなわち、タイによって音を伸ばさなければならないのであれば、歌い手や管楽器演奏者の息継ぎ、弦楽器演奏者の弓使いは、その最初の音で止めることはできないからである。」
この「原則」はもっともであり、彼の説にしたがった記譜法がもっともじゃないかな、と私は考えています。

ただ、後側にタイがいくつも付いている場合には、前の音につないだ方がわかりやすいとも思います。

2_2

正しくてもわかりにくい楽譜では、楽譜本来の目的からはずれてしまいます。
「まず正しい基本に則る。でも、場合によっては臨機応変に」というのが大切じゃないかな、と考えています。

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2014年9月26日 (金)

英語で何ていう?

以前このブログで、1991年に浄書ソフト「SCORE-2.0」をアメリカから購入したお話しをしましたが、覚えていらっしゃいますか?
(タイトル「PCが会社にやってきた! 」 5月28日付けの記事です)

5インチのフロッピーディスクに収められたソフトが届き、操作方法を学ぶべくマニュアルを読もうとして...、staffやらmeasureやらnoteなどなどの単語が頻出していて、とまどいました。

「スタッフ?」「もの差し?」「ノート?」
どれも知っている(中学校で学んだような)単語なのに、マニュアルはちんぷんかんぷんで意味不明。
それぞれ、あらためて辞書にあたってみると、語義列のズーッと後ろの方に[音楽]と注記されておなじみの日本語が載っていました。
「譜表、五線」「リズム、拍子、((米))小節」「音、音符」...。一見ごくごく普通の単語なのに、どれも音楽用語、楽譜用語だったのです。

音楽についての本、特に記譜や楽譜について書かれた英語の本を読むとき、知っていないと歯が立たない単語の一部を下に示します。
どれも、日本語ではいかめしい漢字がならんだ単語が、英語ではごく簡単な単語になっているのが面白いですよね。 
 五線=staff
 音符=note
 休符=rest
 音部記号=clef
 小節=measure
 小節線=barline
 拍子記号=time signature
 調号=key signature
 符頭=note head
 符尾=stem
 符鉤=flag

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2014年9月10日 (水)

とても低く移調するときには

フルートやバイオリンの楽譜を見ていると、加線が多くて、音を読むのが難しいなあと思うことがあります。
加線が少ないと楽譜は読みやすくなり、楽譜が読みやすいと、メロディの流れが自然に入ってきて、弾きやすく理解しやすい楽譜になります。

移調や移調ピースでは、「うんと低くしてほしい」というご希望もあります。
たとえば、ある曲を「完全5度下げて移調したい」とご注文いただいたとします。ミュージックソフトでただ移調しただけでは、曲によっては加線がたくさんある楽譜になってしまいます。こんな楽譜を渡されては、ピアニストは初見で弾くのが難しくて大変です。
福田楽譜ではそういう場合、こんなふうに楽譜を編集しています。

移調したままの楽譜です。

Ps_4

加線の多い音を下段に移動すると・・・。

Ps_5

楽譜はほんの少し手間をかけると、自然に音の流れを示してくれます。
読みやすく、弾きやすい楽譜を作っていきたいと思っています。

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2014年8月22日 (金)

Caesura (カエスーラ)

皆さん、こんな記号をご存じでしょうか?

Caesura

この記号 (//) は、Caesura(カエスーラ)といって、交響曲の楽譜で見かけることが多い記号です。

福田楽譜に依頼がくるお仕事は歌に関する楽譜が多く、わたしが交響曲の楽譜を初めて作ったのは2000年のことでした(それまで Caesura など見たこともなく、偉そうに「こんな記号ご存じでしょうか?」などと言ってしまった自分が恥ずかしい...)。
そのときのお仕事は、関西のバレエ団からのご依頼で、手書きの「ドン・キホーテ」の総譜からパート譜を作るというものでした。その楽譜は、ロシアがまだソビエト連邦だった時代に、ソ連のあるバレエ団が所有していたもので、ソ連崩壊の際に混乱の中で救い出されてきた楽譜だったそうです。ある縁から関西のバレエ団がこの総譜を手にいれたもののパート譜がなく、公演でこの「ドン・キホーテ」を演じるためには、パート譜を作る必要がありました。
わたしはそれまで、ピアノや歌の楽譜については楽譜をたくさん見ていたのですが、交響曲の楽譜をじっくり見たことがなく、始めは「総譜からパート譜に書き写すだけ」のかんたんな仕事だろうと思っていました。しかし、その楽譜は手書きで見づらく、音の不確かな部分もあり、他の楽器の音と比べながら楽譜を作るという作業が必要になりました。
また、楽譜に表記された記号も、歌やピアノの楽譜では見たことのない記号がいろいろありました。その中の一つが、このCaesuraでした。記号がついた箇所のメロディを頭で追ってみると、息継ぎみたいな気がしたのですが、はっきりしたことはわからないので、調べてみました。

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カエスーラ(//)とは、小さな休止またはテンポの中断である(音の中断を暗示する)。カエスーラの休止は、息継ぎ記号よりもわずかに長いが、フェルマータよりも短い。("Essential Dictionary of Music Notation"より)]
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楽譜は五線と音符で成り立っていて、楽譜の記譜法さえ知っていればどんな楽譜でも簡単に作れそうです。しかし、種類が違う音楽の楽譜は、同じクラシックというジャンルのものであってさえ、知らないことがまだまたくさんあるのだと思い知らされました。
さらに、交響曲の楽譜を作るためには、楽器の特性や交響曲楽譜の規則を知らなければならないことも学びました。

その後、 総譜や現代曲、珍しい楽器用の楽譜を作るお仕事が舞いこむようになってきました。ハープの楽譜では楽しい出会いがあり、そのお話をまたいつかしたいな、と思っています。

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2014年7月30日 (水)

異名同音に替える場合-移調ピースの場合

福田楽譜の移調ピースは、どんな調にでも移調します。
先日「Nessun Dormaを変ト長調(Ges dur)へ移調」のご注文がありました。
変ト長調は♭が6つの調号です。移調してみると、ダブル♭がたくさんつきました。

こういう譜面を渡されると、伴奏者はちょっと困ったな、と思うかもしれません。 初見で弾く場合もあるでしょうし、臨時記号は少ない方が、読む負担も少なく弾き間違いも少なくなります。
さてこういう場合、当社では、お客様にダブルフラットのままにするか、その音に対し異名同音的転換をするか(臨時記号の少ない音に置き換えるか)をお選びいただいています。

異名同音というのは、平均律(※)において、音名は異なるけれど、実際に鳴らした音は同じである音のことを言います。下に2つほど、例をあげます。
Enharmonicex2_2

そして、変ト長調の「Nessun Dorma」は、このように変えました。

  <ダブル♭のままの楽譜>                 <異名同音転換した楽譜> 
Nessun08gesenharm01_2      Nessun08gesenharmdone01_3           

先にも書いたように、臨時記号が少ない方が演奏しやすくなります 。ただ、和音進行や和音の成り立ちを考えたい場合には、異名同音に変えるとわかりにくくなります。
他の調の楽譜をお持ちの場合には、伴奏者の演奏の負担を少なくすることを優先して、臨時記号の少ない楽譜にしていただく方が、よいだろうと思っています。

※「平均律」というのは、1オクターブを12の半音に等分する音律(音響学の理論に基づいて、楽音間の関係をさだめたもの)で、十二平均律ともいう。
 <新訂音楽通論 山縣茂太郎著 音楽之友社より>

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2014年7月 4日 (金)

タイの向き

タイを付けるとき、どちらの方向に向けるか、みなさんご存じですよね。
Tiedir1_3
では、連続2音符の符尾が違う向きになっているときには 、みなさんならどちらに付けますか?
Tiedir2_3

先日、手書きの原稿を見て、楽譜を作っていました。いただいた原稿の楽譜では、上側と下側のタイが混ざっています。当社の浄書ソフトでは、符尾が前後で違う向きにタイを付けるときには、タイは上側につくように最初から設定されています。
でも、その設定を、「下向き」や「開始の符尾に合わせる」と変更することもできるようになっています。
これはどちらが正しいんだろう。本当に上側でいいのかな。

気になったので、記譜(Notation)の教科書で調べてみました。
[Essential Dictionary of Music Notation]では、「符尾の向きの方向が違う場合には、タイは常に上側に付けること」と書かれています。
[Standard music notation practice]や[Music Notation(by Gardner Read)]、[The Harvard Dictionary of Music]には、こういう場合の付け方については書かれていませんでした。
スラーの場合、「符尾の向きが混在したときには、スラーは上側に付ける」ということなので、タイもそれに準じて上側が適切である、と考えておけば良いような気がします。
少なくとも、同じ曲の中では記譜を統一しておくほうが気持ちいいですよねぇ。

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2014年6月27日 (金)

記譜(Notation)について

みなさんは自分で楽譜を書こうとしているときに、分かっているはずだったのに、「あれ、これってどう書けば良かったんだったっけ?」と迷ったことはありませんか?
たとえば、五線の真ん中の線を上下する音の連桁は、上向きに付けた方がいいのかな、下向きかな? 音が2度で重なったときの和音では、どっちの音をはみ出させるんだろう?など、小さなことですが、どっちの方が良かったっけって迷うことはありませんでしたか?

たとえば、こんな場合...

Blogex86b2

「5構成音の和音で中央に来る音符のタイは、その音符の譜表上での相対位置に応じてふくらませる。上の例の左端(A)では、中央の音符が譜表中央にあり、よって、そのタイは下にふくらませる。中央の例(B)では、中央の音符が真ん中の線よりも上にあり、よってそのタイは上にふくらませる。ただし、5音和音の中央の音符がその和音本体の左側に位置する場合には、右端で示すように、符頭との衝突を回避できるようにタイをふくらませる。」
       [Music Notation -A Manual of Modern Practice- by Gardner Read]

浄書 ソフトが主流になった今は、ソフトが自動的に判断してくれるので、あまり考えなくても良くなったかもしれませんね。

楽譜制作の仕事を始めた頃、こんな「ほんのちょっとしたこと」でよく迷いました。「どちらでもいいような気がする。でも、どちらかがより適切なはずだと思う・・・」
記譜(Notation)の本が欲しくて、楽譜屋さんへ行って探してみても、音楽を学んだ人なら当然知っているような内容を羅列した本ばかりで、記譜について詳しく書かれている本は全くありませんでした。仕方なく、楽譜を出来るだけたくさん読み比べて、記譜の規則を経験的に学びました。

当社にインターネットがつながったのはいつの頃だったのか、もう覚えていないんですが、実は英語で探せば、記譜の本や記譜について書かれたものはたくさんあるんですね。
2001年にColorado CollegeのHPで見つけた「記譜の規則」が、わたしの初めての教科書になりました(出力したものが、今でもわたしの手元にあります)。
そして、最初に紹介した"Music Notation -A Manual of Modern Practice"が、長くわたしの教科書になっています。
といっても、英語の本を読むのはかなり苦労します。自分で読んでみたけど、はっきり意味のつかめないところも出てきます・・・。幸い、わたしのパートナーは翻訳を生業としているので、協力して訳してもらいました。

ここで得た細かい知識は、今のわたしの大切なものです。
小さなことだけど、自分が迷ったことなど、紹介していきたいなと思います。

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